◎そこにいつも歌があった(1)
『ふれあい』


 型破りな熱血教師と落ちこぼれの生徒たちが織りなすドラマといえば、青春ドラマである。
とりわけ、「飛び出せ!青春」や「われら青春!」は、七十年代の青春ブームをひっぱった人気シリーズだった。

 なかでも「われら青春!」は、ぼくの高校時代にオンエアされていて、けっこう真剣にハマっていた。
沖田先生役の中村雅俊の一挙手一投足に、いちいち感動するぼくは、劇中で先生が歌う『ふれあい』にも、いたく感動し涙したものである。

 その頃、片思いの女の子がいて、彼女のことを思ってこの歌を口ずさむと、もう涙腺がウルウルだった。
―悲しみに出会うたび、あの人を思い出す。
こんな時そばにいて肩を抱いてほしい―まさに毎日がそんな心情だった。

 ある夏の夜、テレビのベストテン番組に先生(中村雅俊)が登場して歌ったとき、すばらしくカッコよく見えた。
ラッパ型ジーンズに高ゲタという格好で、ギターをかかえ弾き語りで歌う。
しかも、ランキング第一位。とてもインパクトがあった。

 翌日、彼女に会う機会があって、その番組のことを話すと、

「わたしも見ていたわ。先生カッコいいし、いい歌だね」

という感想が返ってきた。
ぼくは思った。よし、自分もギターを弾けるようにして、『ふれあい』をあの娘の前で歌ってやるのだ、と。

 なにを隠そう、これがぼくがギターを始めた動機であり、音楽にめざめたきっかけでもある。まあ、不純な動機だけど、本当のことだからしようがない。

 で、さっそく次の日、ぼくはジーンズショップへ行き、ラングラーのラッパ型ブルージーンを買い求めたのである。
ちなみにこれが、ジーンズ初体験であった。
後は、Tシャツを二三枚そろえ、親父の高ゲタを借りて、ギターを持てば、「ふれあい」ルック完成である。

 ま、所詮こうした努力の結果は見えているもので、その後彼女にはあっさり見離され、すべてが水の泡となった。

 でも、それに続く恋もいろいろあったわけで、ちょうどまたそんな時、運よく(?)テレビでは、中村雅俊主演の「俺たちの旅」などをやっていたりするのである。