◎そこにいつも歌があった(19)
『演歌・血液ガッタガタ』(バラクーダ)


 どこでそうなってしまったのか、人間の運命というのは不思議なもので、僕は一時、バラクーダの付き人をしていたことがある。

 だからこの歌は、ある意味で大変愛着もあり、また数々の思い出とともに甦る“キーソング”でもある。

 今を溯ること十年余り前、音楽バンドで認められた僕とその仲間たちは、夢と希望を胸に勇んで上京した。
僕らは確かに認められたんだけど、そこのプロダクションは、お笑いバラエティ系の事務所だった。

 純粋に音楽を追求したい若者には、いささか不似合いな世界で、どうもしっくりこない。
そうこうしているうちに、一人抜けまた一人抜けと、気づいたら僕だけになっていた。

 で、さてどうしようかと思っていたところ、「バラクーダの付き人をやってほしい」という話があった。
僕は誘われるまま、深く考えることもなく、その話に乗ってしまった。

 最初、正直言って、コミックソングなんてたいしたことない、と軽く見ていたけど、実際にそばにいて、バラクーダのすごさというか、面 白さを肌で知るに至ったのだ。

 バラクーダといえば、『日本全国酒飲み音頭』で一世を風靡した、コミックシンガーである。
その後も『チャカポコチャ』などでヒットを飛ばし、考えてみればこの分野でコンスタントに売れたのは、彼らだけである。

 そのバラクーダが新曲を出すというので、何かと思えば、血液型占いをモチーフにした歌だという。
それが『演歌・血液ガッタガタ』である。
当時、血液型占いがやたらと流行っていた時代で、人々の関心を呼びやすい歌だったことは確かである。

 果して蓋をあければ、たちまちヒットチャートにのぼり、日本有線大賞の特別 賞まで受賞してしまった。
彼らはノリにのっていた。

 そうした勢いに乗せられる形で、気づけば僕まで舞台にひっぱりあげられていた。

 渋谷のライブハウスでワンマンショーを開いた折りには、バックコーラスをやったし、キーボードも弾いた。
ある寄席では、突然高座に呼ばれ、素人芸をやらされたりもした。

 だからだろうか。今もぼくは、カラオケへ行くと、この歌を思わず歌ってしまうのだ。