ピンク・レディーといえば、もうあれですよ。
カラっとしたお色気を武器に、破格的な売れ方と露出の仕方で、空前絶後のピンク旋風を巻き起こした二人組。
別名ピンクのモンスターとも呼ばれ、セクシーアイドルのはしりでもあった。
当然それはぼくも、リアルタイムで鮮明に覚えていて、デビューからして衝撃的だったもんね。
超ミニスカートの若い女の子が二人、いきなり大股開きに屈伸ときたもんだから、「なんだなんだ」と世間もぼくもぶっ飛んだ。
そんな大胆なこと、テレビでやっていいのかなあ……と思いつつも、生唾ものでテレビ画面
に釘付けとなってしまう。
いったいこの娘たちは誰だろう、とぼくも周囲もみんな訝ったり喜んだりで、気もそぞろだった。
それが、ぼくたちの前に突如出現したピンク・レディーの第一印象だった。
最初、若い男やオヤジたちが喜んでいるだけかと思っていたら、そのうち子供たちの間でも異常な人気があるとわかった。
家庭教師で教えていた中三の女の子なんか、「先生、見て見て」と言って、授業が終わると、ピンク・レディー顔負けの振り付けを、大胆にかつ得意げに披露してくれた。
それは『ペッパー警部』だったり、『ウォンテッド(指名手配)』だったり、『UFO』だったりと、その時によっていろいろである。
まあ、それはいいとしても、中三といえどいちおう発育盛りの女の子である。
あまり大胆な格好で踊ってもらうと、こっちも目のやり場に困ってしまうのだ。
けれど彼女の方は、クラスで大流行だからと、まったく気にする様子もなく、無邪気なものだった。
こうした社会現象ともなったピンク・レディだが、実はこの二人組、当初考えられていたのは、そんな気のきいたグループ名ではなかったらしい。
生みの親でもある作詞家阿久悠によれば、レコード会社が強く押したのは、「白い風船」だったという(「夢を食った男たち」より)。
しかも、デビュー曲も『ペッパー警部』ではなく、B面に収まった『乾杯!お嬢さん』が有力だったとか。
やはり「白い風船」の『乾杯!お嬢さん』では、社会現象もピンク旋風も、何もあったものではない。
|