◎そこにいつも歌があった(4) 『夜空ノムコウ』 |
そういえば最近、夜空を見あげるなんて、めっきり忘れていたなあと思った。 僕が初めて『夜空ノムコウ』を聴いたとき、スマップは、元旦の“夜空”のなかにいた。 たしか、カウントダウンの特番か何かで、歌っていたような気がする。 で、急いで外に出てみた。 少し曇っていたけど、淡い星空が見えた。これから、何が始まるのだろう。 どういった日々が続くのだろう。 僕は、天空を仰ぎながら、そんなことを思い巡らすのだった。 この『夜空ノムコウ』には、僕のような年代の者でも、不思議とくすぐられる何かがある。 アコスティックなメロディの響きといい、歌詞の普遍性といい、じつに泣かせる。 昔懐かしい匂いと輝きが、今に生きる彼らの歌声とともに、再び甦っているようだ。 たぶんこう感じるのは、僕だけではないだろう。 年代や男女の差こそあれ、そうした不思議な気分は、きっと感受されているに違いない。 ある人は、受験勉強の最中にこれを聴くだろう。 またある人は、返らぬ昔に思いを馳せ、しみじみと感慨を寄せるだろう。 はたまたある人は、スマップの同年代で、リアルタイムの共感を胸に抱くかもしれない。 いずれにしても、夜空の向こうに、そこはかとなく人生を感じさせる歌、といえる。 考えてみれば、スマップ自身も、結成から十年がたつ。 その間には、彼らなりに様々な出来事があったにちがいない。 仲間のこと、仕事のこと、家族のこと、それに恋の話や人生の哀歓について、僕らが知らない諸々の現実があったはずだ。 そうした思いが、すべて折り重なって、彼らの歌う姿に感じられるのだ。 少なくとも、僕にはそう見える。 僕はいつでも、アーティストと歌との間に、そういった関係を見出そうとする。 彼らの人生と、自分自身の人生を重ね合わせることで、心に残るマイソングを探したいのだろう。 それにしても、ギターを弾くキムタクは格好いい。声も渋いし歌詞のまるめ方もうまい。 〈あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ 夜空のむこうには もう明日が待っている〉 果してぼくらは、あのころの未来に、いま立っているのかなぁ……。 |
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