人はだんだん年を得るごとに、ピュアな部分をなくしていく。
はるか遠く、理想とか夢をかかげて、熱く胸をふるわせた人であっても、十年たち二十年たち、世間の荒波にもまれるうち、しだいにただの人になる。
ましてや、大した目標や望みもなく、のほほんと青春を過ごしたような人は、流されるままに流される。
で、僕はどうだったかというと、あまり褒められたものではなかった 。
高校を卒業する間際になっても、まだ進路が定まらず、ふらふらしていたのだから。担任の先生も、
「公務員だの進学だの就職だのって、おみゃーさんは、いったい何がやりたいんだね」と、ほとほと呆れていました。
困ったもんです。
でも、自分なりに、僕が僕であるためのスタイルを、必死に模索していたことだけはたしかです。
たとえそれが、周囲には気まぐれに見えても……。
そんなとき、親友のひとりが、「ユーミンの『卒業写真』ってジンとくるよな。
なんか俺たちのこを言われてるみたいで」と言った。
僕が、「そうだよな、通学路には柳があって、それが電車から見えるもんな」と言うと、「違うよ、そうじゃなくて、あの歌のように卒業してからも、大切なものを忘れないでいられるかってことだよ」と彼は言った。
〈あの頃の生き方をあなたは忘れないで あなたは私の青春そのもの〉
〈人ごみに流されて変わってゆく私を あなたはときどき遠くでしかって〉
遠くでしかって、と言われてもそんな僕は立派なもんじゃないけどなあ、と言うと、彼は「まあ勝手に言ってろ」と笑った。
彼は、今でいうキムタクに似たルックスだったので、大変モテた。
だからきっと、この曲の歌詞のような心情を、女の子から告白されたのだろう。
僕も彼のように、告白してくれる女の子を待ったが、ムダなあがきだった。
それはそうと、あの頃を忘れないで、みんな元気にやってますか?
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