◎そこにいつも歌があった(8)
『贈る言葉』(海援隊)


 こんなふうに恩師に言われたらどんなにいいだろう……。
僕は『贈る言葉』を聴くたび、いつも思う。

 ほとばしるような愛情を、惜しまず子弟にそそぎ、より高く飛翔するよう、陰ながら祈る師父。
その真摯なまなざし、まっすぐな祈りを感じるとき、僕はこのうえなく幸福だろうと考える。

〈だけど私ほど あなたの事を 深く愛したヤツはいない〉
〈愛するあなたへ 贈る言葉〉

 こんな先生がいてくれたらなあ……。
テレビドラマ「三年B組金八先生」を見ていて、いつも感じたことだ。フィクションだとわかっていても、求めてしまう。

 その頃の僕は、すでに高校を卒業し、社会人の仲間入りをする時期だったが、それでもそれは、切実な願いだった。

 心のうちの大望はどうあれ、なにせ世間的には、完全無欠のプー太郎だったのだから。
強がりのポーズとは裏腹に、だれかに認められたい、支えていてほしいという思いが、人一倍強かった。
だから金八先生を求め、『贈る言葉』に慰められたのかもしれない。

 いじめや校内暴力、中学生の妊娠、受験戦争など、当時の社会問題をまっこうからとらえた番組は、それはそれは迫力があった。

 スケ番役の三原じゅん子もドスが利いていたし、マッチもツッパっていたし、何より金八先生の説教には説得力があった。

 ただ、不良役のトシちゃんが、何となくいつも情けなくて笑ったけど、まあこれはひとつの愛嬌だったのでしょう。

 そんなこんなで、この歌はいつも僕のそばにあり、勇気と励ましを与えてくれた。けれど、今の少年たちについて考えたとき、果 して金八先生や『贈る言葉』は、どこまで通じるのだろうか。

 人の痛みを知り、自分の弱さを思い知り、心が本当に強くなれば、ナイフもドラッグも暴力もいらないはずである。
もしも可能であれば、スペシャル番組でもいいから、現代の「金八先生」をやってほしい。

 そしてもう一度、溺れそうな子供たちに、『贈る言葉』を投げかけてやってください。