ここはストリップ小屋か、と思った。
いまここに集まっている連中は、およそ最高学府に学ぶ者の片鱗など、どこにもない。
ただもう、歓楽街のスケベオヤジと何ら変わりはない。
舞台のソデからその様子を窺っていた僕と君田は、声を失って、唖然とするばかりであった。
君田などは、ステージから背を向けて、頭を抱えていた。こんな学園祭の演し物は、はじめてである。
「帰るっ」
とひとこと言うと、君田は憮然とした表情で、舞台裏の非常口を出ていった。
僕は、あわてて後を追った。
「おい、ちょっと待てよ」
「待てないね、やってられないよ」
「わかるけど、ギター置きっ放しで、帰るのか」
「あとは淳成、悪いけど頼むわ」
そんなこと頼まれても困る、と言う間もなく、君田はいなくなった。
よほど、腹にすえかねたのだろう。僕だって同じだ。
とくに彼は、自分たちの音楽を一途に求めている。
それが、こんな形で侮られたのだから、当然である。
講堂のステージでは、まだルナの裸の舞が続いていた。
野卑な奇声は、一段とまして、建物の外壁まで振るわせる勢いだった。
「どうだ星名、楽しいだろう。みろ、盛り上がってるぞ」
「その様ですね。…ぼくらはこれで失礼します」
「おい、勝手に帰るなよ」
「これがあなたの言う、音楽の仕事ですか…」
社長の三崎は、キョトンとしていた。
全然わかっていない。
僕は両手にギターを抱え、木立ちの坂を、とぼとぼと下っていった。
空はどんより曇り、視界の先が何となく冷たく凝固していた。
時々、浮かれた感じの学生グループが、ふらふら通りすぎていった。
(このままじゃ、ぼくらはダメになる)
そんな考えが時折浮かんでは消え、潜在する不安を掻きたてた。
帰宅すると、アライ文具店のオババから手紙が届いていた。
七瀬ゆかりにお金を借りた件で、心配している様子だった。
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