吊り下げ型のモノレールの下を横切って、一行は傾斜のきつい細い路地に入った。
どうやらこの坂を登りきったところに、目的の大学があるらしい。浮かれたような学生が、何人もその通
りを往来している。
中秋なのに、汗ばむような陽気だ。
ぼくらは、それぞれハンカチを手に正門をくぐった。
「いいか、君たちはしばらく控えの教室で待つんだ。番がきたら呼ぶから」
社長は、肩で息をしていた。声もかすれている。
それでも彼は、少し息を整えてから、ルナと一緒に講堂のほうへ消えていった。
ぼくらは控え室を探し、そこで音合わせをした。
「あの女、ダンサーって言ったけど、もしかしてストリップでもやるんじゃねーか」
君田は、一曲歌い終えると、そう言って笑った。
「まさか、大学の講堂で裸になるわけないだろ」
と、ぼくも笑った。
しばらくして、廊下で忙しげな靴音がした。
「おい、出番だ」
肉付きのよい三崎の顔が、出入り口から覗いた。
彼についてゆくと、大講堂では、すでに大勢の学生たちが詰めかけていた。
それも男がほとんど。異様な熱気である。
今にもプロレスの試合か何かが始まるような興奮が、場内全体を覆っていた。
「これは、すげえや」
さすがの君田も、この尋常でない雰囲気に、思わず嘆息した。
「君たちはルナの前座として、2曲ほど歌う。よろしく頼むな」
三崎からそう言い渡され、ぼくらはギターを抱え、ステージへ上がった。
ギターとボーカルのマイクをセッティングし、さあスタンバイ、という時に、場内から一斉にブーイングが起こった。
『帰れー、おまえらはいらねーぞ』
『そうだ、ひっこめ、ルナちゃんを出せー!』
『早くいとしい彼女を拝ませろ!』
もう言いたい放題である。
君田のこめかみに青筋が立った。
キレるかと思ったが、彼は歌いだした。
ぼくら〈キャンドル〉にとって、屈辱的なステージである。
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